SDGs(エスディージーズ)とは?
最近、さまざまな場面で耳にすることが多いSDGs(エスディージーズ)。SDGs(エスディージーズ)とは、「Sustainable Development Goals」の頭文字をとった造語で、ミレニアム開発目標(MDGs)に変わるものとして、2015年9月に国連が提唱した持続可能な開発目標であり、2030年までに達成することをゴールとしています。
この目標は、環境保全や人種差別、貧困といったマクロ的な視点に限らず、例えば飲食店、小売店などのみなさんにも非常に関係の深いキーワードです。
本日は、SDGsの概要や歴史、取り組むメリットや事例などについて解説いたします。
SDGs(エスディージーズ)の成り立ち
SDGs(エスディージーズ)とは、2015年9月に国連サミットで採択された持続可能な開発目標のことで、17の大きな目標と、具体的な169のターゲットで構成されています。
2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)を下地にしたもので、貧困、教育、ジェンダー、環境保全などさまざまなジャンルにおける目標が設定されています。
ミレニアム開発目標(MDGs)では、主に発展途上国の課題を中心とした目標でしたが、SDGs(エスディージーズ)では、先進国が抱える課題も追加され、全世界が対象となっています。SDGs(エスディージーズ)は、あくまで国がイニシアチブをとって行うものとしており、各国が状況や優先課題を鑑み、政策やロードマップに落とし込んでいくことが重要です。
SDGsとESGの違い
SDGsに似たものに、ESGがあります。ESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの言葉の頭文字をとった造語で、企業の長期的成長に必要な概念として、近年注目されています。また、これらESGの要素に配慮して経営している企業に投資することを「ESG投資」と呼びます。SDGsがゴールとすれば、ESGはそのプロセス、取り組みそのものを指します。
前身である「MDGs」とは?
ミレニアム開発目標(MDGs)とは、2000年9月にニューヨークで行われた国連サミットで採択された国際目標です。ミレニアム開発目標(MDGs)では、8つの目標、21のターゲット、60の指標が設定されており、2015年を期限として制定されていました。
ミレニアム開発目標(MDGs)では、飢餓や貧困に苦しむ人口を19億人から8億人に、HIV感染者数を35%減らすなど、一定の効果は見られたものの、衛生、教育といった分野では目標を達成できませんでした。
そこで、SDGsでは先進国まで範囲を拡充し、目標も8つから17つに増やし、世界全体で社会課題を解決することを主眼にしています。
SDGsの達成状況
国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が行った調査によれば、日本は162カ国中15位で、2018年と同じ順位でした。日本は、特にジェンダー、気候問題、消費・生産のカテゴリで課題があるとされています。1位はデンマークで、最下位は中央アフリカ共和国でした。
出典:サステナブル・ブランドジャパン|世界のSDGs達成度ランキング
とりわけ、世界的に見ても、目標14「海の豊かさを守ろう」を達成していると評価された国はありませんでした。また、G20および人口が1億人以上の43カ国中、SDGsの達成に向けて動くことを国として公式発表しているのは現在までで33カ国しかありません。
また、日本国内におけるSDGsの認知度に関して、世界経済フォーラムがSDGsの認知度調査によると、世界平均では74%が聞いたことがあると回答しているのにも関わらず、日本国内では49%で、調査対象国28カ国中最下位でした。日本国内において、SDGsという取り組みそのものが浸透しておらず、まず認知度を向上させることが最優先事項といえそうです。
SDGsで定められている17の目標と169のターゲット
SDGsでは、17の目標と169のターゲットが定められています。ここでは、17の目標について、それぞれ簡単に解説いたします。
出典:国際連合広報センター
【17の目標】
1.貧困をなくそう
現在、貧困と呼ばれる人は世界で10人に1人、先進国の中だけでも3000万人の子供が貧困で苦しんでいると言われています。あらゆる場所のあらゆる状態の貧困を終結させることが目的です。
2.飢餓をゼロに
貧困によって飢餓の状態にある人は世界で9人に1人といわれています。世界の人口は2050年に98億人に到達するといわれており、ますますこの状況が悪化することが想定されます。ただ、食糧は足りていないわけではなく、適切な場所に行き届いていないのが問題で、現在約13億トンもの食料ロスがあるとされており、この問題を改善するだけで飢餓で失われる多くの命を救うことができます。
3.すべての人に健康と福祉を
発展途上国では、医療技術がそこまで進展していないなどの理由により、妊婦、新生児の死亡率が高いのが問題となっています。また、アフリカなどに地域で蔓延しているエボラ熱やエイズなどの感染症も深刻な課題となっています。基本的な医療・福祉を受けられる仕組みを整えることが重要です。
4.質の高い教育をみんなに
紛争、学校が居住地域の近くに存在しない、教育システムが整備されていない(教員が充分にいない)などの要因により、満足に教育を受けられていない子供が6100万人もいるといわれています。
5.ジェンダー平等を実現しよう
未だに多くの国では男女差別が存在します。ユニセフの調査によれば、18歳未満で自分の意志に関わらず児童婚を強要されている子供は年間で1,200万人いるとされています。また、LGBTと言われるように、男女にとらわれない性の多様性を理解し受け入れることも重要です。
6.安全な水とトイレを世界中に
発展途上国によっては、汚水処理施設がない地域もあります。衛生状態が悪く、感染症などの蔓延が起こり、きわめて生命の危険がある状態にさらされている人が多く存在します。汚水を起因とした疾患で死亡している子供は年間でおよそ180万人いるといわれています。
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
技術がないために、人体に有害な物質を排出しながら燃料を確保している地域が世界中に多く存在します。再生可能かつ資源を枯渇させないエネルギーを利用することで、地球にも人にもダメージを与えることなく、世界の人々がより安心な暮らしを送ることができます。
8.働きがいも経済成長も
労働人口に対し、雇用が足りていないことが問題となっています。失業の問題は、やがて内紛や略奪、移民などの問題に発展し、他国へ問題が飛び火します。自国内で雇用をまかなうことで、問題を縮小化させることができます。
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
発展途上国においては、未だインフラが整備されていない地域が多く残されています。 ただインフラを作るだけでなく、自然災害にも耐えうる、強いインフラの整備が必要となります。
10.人や国の不平等をなくそう
国家間における不平等の是正を促す目標です。人種差別はもちろん、性における差別、 貧富による医療格差など、あらゆる不平等をなくすことが世界平和において大切です。
11.住み続けられるまちづくりを
自然災害に見舞われても、すぐに復興できるまちづくりを目指す目標です。それぞれの立場の人がいつまでも住みやすい環境であるか?介護者、乳幼児、障害者など、多様性を受け入れられる視点もまた重要になります。
12.つくる責任 つかう責任
持続可能な生産と消費のサイクルを作ること。目標2の「飢饉をゼロに」にも関連する内容で、「つくる責任 つかう責任」がおろそかになることで、世界的な食糧の安定供給のバランスは損なわれます。
13.気候変動に具体的な対策を
言葉通り、異常気象に対して具体的な対策を講じていく目標。1880年から世界の平均気温は0.85℃も上昇しています。何も対策を講じなければ、2050年には2℃、2100年には4.8℃上昇するといわれており、早急な対策が求められています。
14.海の豊かさを守ろう
浮遊ゴミなどによる海洋汚染だけでなく、海産物の乱獲によって、資源枯渇の問題が生じています。水産資源が枯渇すれば、漁業に携わる雇用や飢餓などの問題ももたらします。
15.陸の豊かさも守ろう
年間にして、およそ東京都59個分の面積の森林が、そして4万種の生物が絶滅しており、生態系のバランスが崩れ始めています。森林がなくなれば、土地は砂漠化し、人が住める地域は年々減少していきます。
16.平和と公正をすべての人に
目標15つを内包した目標。SDGsのスローガン「No one will be left behind」を体現している目標でもあります。差別、紛争などをなくし、平和で安全な生活を実現するには、国、企業、個人が、それぞれの多様性を受け入れ、生活していくことが大切です。
17.パートナーシップで目標を達成しよう
全ての目標を達成するためには、各国との連携・協力が必要不可欠です。無為な紛争を終結させ、平和的解決を望むことで、SDGsを達成することができます。
食品・包装に関わる目標12「つくる責任 つかう責任」とは?
飲食店業界に最も関連性の高い、目標12「つくる責任 つかう責任」について、もう少し詳しく解説いたします。
「つくる責任 つかう責任」は噛み砕いて説明すると、持続可能な生産と消費のサイクルを作ることです。
具体的には、天然資源の持続可能な管理と効率的利用、食糧廃棄(フードロス)や廃棄物の削減、化学物質などの放出の低減が求められています。実践例としては、リユース・リサイクルパッケージの開発や、フードロス削減のために賞味期限の延長、または賞味期限切れの商品の安売りやキャンセルによって余剰した食材ロスの削減など、国内外でさまざまな施策が行われています。
SDGsに取り組むメリット
SDGsに取り組むと、どのようなメリットがあるのでしょうか?それは、主に以下の3つに集約されます。
ビジネスチャンスの創出
Business & Sustainable Development Commissionが2017年に発表したところによれば、
SDGsによって年間に12兆ドル(1340兆円)の市場規模、また2030年までに3億8,000万人の雇用を創出するという試算が出ています。
ビジネス&持続可能開発委員会報告書|より良きビジネス より良き世界
このように、SDGsは将来的に大きな市場になると想定されています。また、SDGsによって、ビジネス環境が大きく変わり、もしかしたら事業の方向転換や再構築などを検討しなければいけなくなるかもしれません。短期的に見ればマイナスですが、長期的に見れば自社の利益につながります。裏を返せば、いずれ直面するかもしれないリスクを回避できることとも言い換えることができます。
また、SDGsを取り組むことが一般的になれば、取引条件として検討する企業が今後増えてくることが見込まれるため、販路の面においても有利に働くことは間違いなさそうです。
資金調達の面で有利に
「ESG投資」とは、業績や企業規模だけではなく、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの指標を重視し、将来性などを分析する投資方法のこと。「ESG投資」の起源は、2006年に、当時の国連事務総長だったコフィー・アナン氏が提唱した国連責任投資原則(PRI)にさかのぼります。国連責任投資原則(PRI)とは、投資の意思決定にESGの観点を盛り込み、長期的な事業投資を促すルールを指します。Global Sustainable Investment Allianceのデータによれば、ESG投資の規模は、2016年に22.9兆ドルだったのが、2020年には35兆ドルまで到達すると見込まれています。
企業のブランディング向上
あらためて、SDGsと絡めた自社のコンセプトやビジョンを世間に発信することができ、企業の認知度向上にもつなげることができます。
また、社会貢献性の高いイメージが定着することで、優秀な人材の確保、SDGsなどを通して、製品や商品などに付加価値をつけることで、競合他社との差別化・独自化もはかれます。