環境に優しい容器とは?
近年、使い捨ての食品パッケージの環境対応化が世界から求められています。 環境に優しい容器には、具体的な定義はありません。一般的には、素材が環境に配慮したものかどうかが基準になります。
例としては、竹やバガス(サトウキビのしぼりかす)などから作られたパルプモールド容器、適切な森林管理から得られた木材を原料した紙製容器などといったプラスチック以外を原料とした容器が挙げられます。プラスチック製の容器であっても、リサイクル原料を使用したものや植物由来の原料を使用したものも環境に優しい容器といえます。
この記事では、なぜ環境に優しい容器を使うことが求められているのかを、今直面している3つの環境問題を例に挙げながら説明していきます。
環境に優しい容器を使用する意義とは
私たちの生活の中で、食品容器包装は、食品の品質保護、輸送等で必要不可欠となっています。食品容器包装は、便利である豊かな社会を作り出す反面、使用後はゴミとして捨てられることで、様々な環境問題の原因となっています。
環境に優しい容器を使用することで、化石資源の枯渇、地球温暖化、ごみ問題など多くの環境問題の解決に貢献できます。しかし、一部の企業や個人だけが環境に優しい容器を使用していても環境問題の解決には繋がりません。なぜ全ての事業者が環境に優しい容器を使用すべきなのかを「企業の社会的責任」「マーケットの長期的発展・繁栄」「事業の売上拡大」の3つの視点から解説していきます。
企業の社会的責任
企業は世の中の役に立つ製品やサービスを提供し、その対価としてお金を受け取って運営されているため、「利益の追及」は事業活動を続けていく上で必要なことです。しかし、目先の利益を追求するがために、環境対策や従業員への配慮がおろそかになってしまうと、継続して発展していくことが難しくなります。
そこで、企業は利益を追求するだけでなく、環境問題や人権問題の対応など社会的な責任をはたすべきであるという考え方である、CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)が近年重視されてきています。
世界が直面する環境問題や人権問題などを解決するための「持続可能な開発目標(SDGs)」が2015年国連サミットにおいて採択されました。SDGsはCSRと異なり、具体的な17の目標と169のターゲットが設定されており、それぞれの目標に向けて企業がビジネスとして解決することが求められています。そのため、多くの企業が事業計画にSDGsを盛り込み、社会的責任を果たすべく、取り組みを始めています。
出典:国際連合広報センター
マーケットの長期的発展・繁栄
地球温暖化、大気汚染、化石資源の枯渇、海洋プラスチックごみ問題など、地球環境には大きな課題が数多く存在し、これらの問題を放置すると、製品の原料となる資源が手に入らないなど事業やそのものが継続できなかったり、マーケットそのものが消滅してしまう可能性があります。そのため、今の時代では、企業が環境保全に取り組むということは自分自身やマーケットを守り、長期的に発展・繁栄するための必須条件だといえます。
環境に配慮する企業は、地域社会からの信頼を得て、従業員の満足感も得ることができ、この企業で働きたいと就職希望者も増えます。また、世界的にSDGsの目標達成の機運が高まっている事もあり、環境配慮を目標にする企業も多く、目標を共にする取引先の拡大や継続的な発展も期待できます。
事業の売上拡大
世界的にSDGsの認知や海洋プラスチックごみ問題が広まったことで、企業だけでなく消費者も環境に対する意識が従来より高まっています。最近では、環境保全や地域・社会へ貢献できる商品やサービスを購入・消費するという「エシカル消費」という考え方も浸透してきています。食品容器を例に挙げると、同じお弁当を買うなら、環境に優しい容器を使用した商品や使用している店舗から買いたい、という考え方です。
そのため、企業が環境に配慮するということは、地域社会や従業員、消費者からのイメージアップだけでなく、消費者の購買活動にも直結していると考えられます。また、環境保全を目標の掲げる別の企業やマーケットからも評価してもらえる可能性が高まるため、新たな取引先やマーケットの開拓にも繋がり、事業の売上拡大にも繋がります。
一般消費者においても年々環境問題への関心が高まり、出来るだけ環境配慮した商品を購入したい、同じ買い物をするなら少しでも環境にやさしい商品を購入したいと声も多く聞かれます。場合によっては、納入・販売条件として環境に優しい食品容器包装を使用する事が条件になっているケースも聞かれる様になってきました。
今直面している3つの環境問題
特に重要な環境問題として、下記の3つが挙げられます。
· 資源・食料の不足危機
· 地球温暖化・それに伴う異常気象
· ゴミ処理機能の限界
これらのの問題は、それぞれ独立して発生している問題ではなく、各々につながっているので、ばらばらには議論できない問題です。例えば、資源や食糧の不足は、地球温暖化や異常気象が原因の一つであり、それぞれが関連性を持っています。ここでは、3つの環境問題について詳しく説明していきます。
資源・食料の不足危機
日本では数年前より少子高齢化進み、人口減少の時代に入ったと言われていますが、世界では毎年約8,300万人も増加しています。これにより世界のエネルギー消費量や食料消費量は年々増え続けています。国際エネルギー機関(IEA)によれば、2040年の世界のエネルギー消費量は、2014年と比べておよそ1.3倍に増加し、その増加分の多くを占めるのが、中国やインドなどのアジアを中心とした新興国だと予測しています。
新興国は、近年大きな経済発展を遂げており、今後ますますその成長は加速していくでしょう。これに伴い、経済を支える石油や石炭、天然ガスといった化石燃料の需要も増加していくとみられています。
エネルギー資源確認埋蔵量とは、現時点で確認されている経済的、合理的な範囲で採掘可能なそれぞれの資源の埋蔵量を年間の生産量で割ったもので、「このまま使い続けるとあと何年資源を採取できるか」という数字です。このエネルギー資源確認埋蔵量は、石炭とウランが100年超、石油、天然ガスは50年ほどと見られています。今後、新たな油田や鉱山が発見されたり、技術革新によってこの数字が変わっていく可能性はありますが、化石燃料がいつかは尽きてしまう「限りある資源」であることに変わりはありません。
地球温暖化・それに伴う異常気象
気候変動の中で大きな問題を占めるのが「地球温暖化」です。地球温暖化とは、二酸化炭素などの温室効果ガスが地球の上空をおおい、地球を温めてしまう現象です。
地球の気温が上昇することで、それに伴う様々な自然災害や異常気象、生態系への影響が起きています。日本では、豪雨の頻発や台風の強大化、世界に目を向けると降雨パターンの変動による水害、森林火災、ハリケーンの発生や干ばつの長期化が挙げられます。
ゴミ処理機能の限界
環境問題の中でもゴミ問題は特に深刻で身近な問題です。世界で一番ゴミを燃やしている日本ですが、埋立地(最終処分場)が一杯になり、あと20年で無くなると言われています。
現在の日本では、年間5500万トンの家庭ごみが出され、400万トンの産業廃棄物が捨てられています。日本は世界一の焼却炉数を保有し、ゴミを最小限の大きさまで小さくし、埋め立て、リサイクル資源として再利用できる廃プラスチックは中国を中心にアジア各国に輸出してきました。しかし、2018年中国が廃プラスチックの輸入禁止を発表したことを発端に、アジア各国でもゴミの輸入禁止を決め、日本の廃プラスチックの行き場が無くなり、ゴミを捨てられるのもあと20年となってしまいました。
出典:環境省|一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成30年度)について
脱プラスチックの動き。プラから紙へ
プラスチックは、丈夫で安定感があり利便性の高い材質ですが、容易に分解できないことから、廃プラごみ問題・海洋プラスチック問題へとつながっています。海洋プラスチック問題は、ウミガメの鼻にプラストローが刺さった画像がきっかけとなり、世界的に認知されるようになり、紙ストローへの切り替えなど脱プラスチックの動きがはじまりました。脱プラスチックの動きは、食品容器などその他のプラスチック製品でも紙製品への切り替えを検討されるようになりました。
プラスチックが問題視されているワケ
地球上で使用されるプラスチックは爆発的に拡大しており、年間3億トンものプラスチックごみが排出されていますが、世界のプラスチックリサイクル率は14~18%ほどであり、24%が焼却、残りは不法に投棄・焼却されています。この状況が続けば、30年後には海に流れついた大量のプラスチックごみが海の魚の量を超えるという予測もされています。資源枯渇問題、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化問題が拡大し、人類の生命を脅かすことにつながっていきます。
先進国がプラスチック利用の禁止を表明
フランスでは2020年よりプラスチック製包装容器の全面禁止をはじめ、イタリア、中国、インドでもレジ袋の禁止され、その他の各国でもレジ袋やカトラリーの使用禁止されています。使用禁止にならなくても、レジ袋の有料化など使用量を減らす動きも多数見られるようになりました。日本でも2020年7月1日よりレジ袋の有料化が始まり、今後ますますプラスチックの使用量を減らす方向に進んでいます。
脱プラスチックに対する日本のスタンス
2019年5月プラスチック資源循環戦略としてプラスチックごみ対策の方針が発表されています。地球規模での資源・廃棄物制約、海洋プラスチック問題、地球温暖化等への対策として、これまで進めてきたプラスチックの3R(リデュース、リユース、リサイクル)や適正処理を更に推進し、またイノベーションを促進することなどを目的とされています。
具体的には2020年7月1日よりレジ袋有料化をスタート。単にレジ袋を削減すだけを目標とするのではなく、ライフスタイルの変革を促進し、ワンウェイプラスチックの削減、再生可能性資源への適切な代替の促進に取り組むことを発表しています。2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%削減、容器包装の6割をリユース、リサイクル、バイオマスプラスチックを約200万トン導入などの目標か発表されています。
環境に優しい容器のご紹介
環境に優しい容器は、非プラスチック素材、バイオマスプラスチックなど多くの選択肢がありますが、ここでは自然由来の非プラスチック素材を原料としたモールド容器であるWBシリーズとBBシリーズを紹介いたします。
WBシリーズ
Wheat(麦)+Bagasse(バガス) 麦の外皮とバガスからできたパルプモールド容器。 麦の繊維の風合いが野菜や果物などの青果物と相性が良いです。
BBシリーズ
Bamboo(竹)+Bagasse(バガス) 竹とバガスから作られたパルプモールド容器。 無漂白の温かみのある風合いが弁当や惣菜とよく合います。
4つの特徴
1 バガス、麦や竹を原料に使用する事で、木材の使用量を減らし森林保護につながります。
2 非可食部分の植物原料由来なので100%土に還ります。(約90日)
3 バガスに竹や麦を混合することで、BBシリーズは柔らかな風合いになり、WBシリーズは自然の素材感が生まれます。
4 電子レンジOK(オーブン、直火は不可)、耐熱(200℃)、耐油・耐水(24H)。
原料となる素材
· バガス
サトウキビから砂糖汁を搾ったカスで、その排出量は世界中で年間1億トンと言われています。バガスは燃料として利用される場合もありますが、使いきれない場合は廃棄せざるを得ず環境汚染の原因となります。
· 麦の外皮(わら)
小麦の収穫後、麦わらのほとんどは廃棄され、畑で燃やされることもあります。
廃棄、燃やされるわらを有効活用しています。
· 竹
成長がとても早く、わずか3ヶ月で親竹と同じ二十数メートルの高さまで成長し、3年もすれば資源として有効利用できるようになります。この成長の早さから竹は資源を枯渇させることなく永続的に活用することができる唯一の天然資源と言われています。
WBシリーズ、BBシリーズについての説明動画も合わせてご覧ください。
まとめ:環境に配慮した容器・パッケージの導入を検討しよう
私たちの生活に必要不可欠となっている食品容器包装。特にプラスチック容器包装は機能性も高く便利である一方、使用後にゴミとして捨てられる事でエネルギー資源問題、地球温暖化問題、ゴミ処理問題、海洋プラスチック問題など様々な問題に直面しています。
このことから日本ではプラスチックの過剰な使用を抑制し、賢い付き合い方を行政だけではなく、企業・個人・団体と幅広く呼び掛けています。
パルプモールド容器は、さとうきびから砂糖汁を絞ったカスのバガス、小麦を収穫した後にでる麦わら、成長がとても早い竹、どれも永続的に活用できる100%植物由来の原料を使用しているため、環境問題に大きく貢献できます。パルプモールド容器を使用する事で、ぜひ環境保全活動にご参加下さい。